転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


閑話1 仲のいい姉弟と治癒魔法


 シーラお母さん視点、ルディーンがまだ4歳だった頃のお話です。


「ルディーン、はやくはやく!」

「まってよ、おねえちゃん」

 今日もキャリーナとルディーンは仲良しだ。

 夕食前に毎日ルディーンがヒルダたちを魔法で癒しているのを見て魔法に興味を持ったキャリーナが魔法を教えてって頼んだのがきっかけで、ああしてお昼ごはんを食べると毎日二人して出かけるようになった。
 でも文字を覚えるのが早かったり、自分で本を読んで魔法が使えるようになるほど頭のいいルディーンと違って、キャリーナはどちらかと言うと私たちに似て体を動かす方が向いてるのよねぇ。

「教えてもらうのはいいけど、本当に使えるようになるのかしら?」

 ルディーンの魔法を見て目をキラキラとさせていたキャリーナの事を思うと、もし使えるようにならなかった時はとても悲しむのではないかと、かなり心配だったのよねぇ。

 ところがそれは取り越し苦労だったようで、

「ヒルダねえちゃん。きょうはわたしがなおしたげる!」

「あら、キャリーナも魔法が使えるようになったの?」

「うん! でもまだおけがをなおすまほうはね、うまくできないからルディーンにおしえてもらいながらだけどね」

 昨日までルディーンが1人でやっていた、武器の練習でできた傷のケアをキャリーナも一緒にやるようになっていたのよ。

 でもあのキャリーナがねぇ。何事もこつこつとやるルディーンと違ってあの子は飽きっぽいところがあるのに、よく覚えられたわね。

「魔法って習得するのが大変だって聞いてたけど、案外簡単なのかしら?」

 ルディーンに教えてもらいながら楽しそうに魔法を使っているキャリーナを見ていると、つい私も魔法を覚えてみようかしら? なんて考えてしまった。

 いけない、いけない。適正はともかく、キャリーナくらいの歳なら色々な事をすぐに吸収するから使えるようになっただけかもしれないもの。なのに簡単そうだから私もなんて思って、もし覚えられなかったら恥をかくだけだわ。

 そう思った私は、この欲望を封印する事にした。


 それから数日たった今も、毎日のケアは二人で担当している。
 でも一つだけ変わったところがあるのよね。それはキャリーナがルディーンに教えてもらわなくても、一人で治癒魔法を使えるようになったと言う事。

「きゅあ! はい、なおったよ」

「ありがとう、キャリーナ。いつもありがとうね」

 魔法で指先をケアしてもらったヒルダに頭を撫でられながらお礼を言われて、キャリーナは嬉しそうだ。
 そしてルディーンも、二人のお兄ちゃんたちの剣の練習時に出来たマメや、軽い打ち身を治してあげているみたい。

 でもこの頃あの二人はルディーンの魔法をあてにしてか、ちょっと無茶な練習をして居るようなのよね。怪我をしないといいんだけど。

 そしてそんな心配は現実の事となる。

 とは言っても骨折したり、ましてや腕を切り落としたりした訳ではないのよ。二人で模擬戦の練習をしている時に、テオドルの剣をディックが楯で受け損なって額に大きな切り傷を作ってしまったの。

「おにいちゃんが、おにいちゃんがしんじゃう!」

「うわぁ〜ん」

「ぐすっ。きゅあ、きゅあ、きゅぅ〜あ」

 その日、ご近所の奥さんたちとの会合で家を空けていると、そこにディックが大怪我をしたってヒルダが飛び込んできたのよ。
 それを聞いて物凄く驚いた私が大慌てで家に帰ると、ディックが額から血を流していて、それに縋りつくようにレーアとキャリーナが泣いていたの。でもその横ではルディーンが目に涙をいっぱい溜めながらも、泣き出す事なく何度が治癒の魔法をかけてくれていたんだ。

 うん、流石男の子。普段は鳴き虫さんだけど、こういう時は頼りになるわね。

 私の見立てでは、ディックの怪我も切れた場所が額だったから血がいっぱい出てただけで傷が深い訳でも無いし、その血もルディーンのおかげでもう止まっているみたいだったから一安心。
 そして残っていた傷も、テオドルが大急ぎで連れてきてくれた村の司祭様の魔法で、痕も残さず綺麗さっぱり消えてしまったわ。

「ルディーン君、偉かったのぉ。魔法というものは心が乱れると中々うまく発動できないものなんじゃが、お前さんが頑張ってくれたおかげでお兄さんはあまり血を流さずにすんだようじゃ」

「ぐすっ、ぼく、まえにおててをすりむいたときに、きゅあをいちどかけただけでなおんなかったんだ。でもなんどかかけたらなおったから、ディックにいちゃんもいっぱいかけたらなおるっておもって、がんばったんだよ」

 治療を終えた司祭様からディックの怪我を見ても泣かずに魔法で治そうとした事をほめられたルディーンは、半べそをかきながらも得意そうに過去の経験を語っていた。

 そうか。ルディーンは自分にできた怪我を治した経験があったから、今回もきちんと魔法をかける事ができたのね。
 でもレーアやキャリーナはただ泣いてすがる事しかできなかったのに、いつもは兄弟の中で一番の泣き虫なルディーンが泣かずに頑張ったのは本当に偉かったわ。

 私も後で、ちゃんとほめてあげないといけないわね。




 閑話は基本、ルディーン君の周りの人たち視点になります。
 兄弟たちとのエピソードやルディーンが居ない場所での出来事が中心になると思うので。

 また、思いついた時に適当に入れるので次何時アップするか、アップするとしたら何時ごろかと言うのもまちまちになります。
 それと1000文字以下の極端に短い話の時もあるかもしれません。あくまで閑話なので。


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